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「ぼんぼり」

2015/鉛筆、折紙、雛人形花嫁道具​/インスタレーション

修了制作展3.jpg

記憶の残し方について考察をしていた。

死に直面すると、その人の声が聞けないことに気がつく。そして、はっきりと思い出せない。

静かになった分、虫の音が良く聞こえた。

静寂になった思い出の輪郭には、無情な時間による、ぼけを感じた。

そのぼんやりとした記憶の集合体のことを「面影」と位置付けてみる。

桃の節句に結婚をした両親。

私の家には、祖父が私の誕生を祝って奮発した7段飾りの、それは立派な雛人形があった。

結婚を表した雛人形に飾る「ぼんぼり」は、元々花嫁の冥福を祈る器具として置かれ、

お盆に飾る回転灯篭と同じく、死者が道に迷わないように足元を照らし続ける意味を含んでいる。

真に存在する所というものは、なにもない空白のことかもしれない。

確かに見えた輪郭という記憶は、月日と共に朧げになっていく。

空白を意識する事が「存在」を、静かに沈ませておけるように思った。

亡き父に、感謝を込めて。ー2015年3月

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